社会心理学者ウォルター・ミシェルらによって行われた「マシュマロテスト」と呼ばれる有名な実験があります。
どういう実験かというと、4〜5歳の子どもの前に、1個のマシュマロを置いて、「食べずに待っていれば、後でもう一つマシュマロをあげる」と言って、部屋を出て観察するというもの。
マシュマロを食べずに我慢できる子もいれば、食べてしまう子もいます。
そして、その後の実験参加者を数十年にわたって追跡調査すると、明らかに食べなかった子の方が、計画性があり成績も良く、肥満指数が少なく、対人関係スキルが全般的に優れていたそうです。
つまり、2個もらうために少し我慢できる自制心(セルフコントロール)がある子どもの方が、成功する可能性が高いという結果がでたのです。
なるほど!
自制心(セルフ・コントロール)こそ、幸せな人生のためのコアな力なんですね!
自制心とは、自分の感情や欲望を未来のために適切にコントロールする力であり、マシュマロ・テストの場合は、すぐに食べたいという欲望を抑えることで、マシュマロが2倍もらえました。それだけでなく、時間がたつともっと大きなリターンとなって戻ってきたのです。
自制心は前頭前野が司っています。
では、そんな大切な自制心を減らしてしまう要因は何でしょうか。
知りたいですよね。
3つあります。
①過度なストレスを受け続けること
②誘惑(マシュマロ)にさらされ続けること
③未来の展望が持てないこと
この3つを減らせれば、自制心をむやみに失うことはありません。
では、その方法を考えてみましょう。
①を減らすためには、
睡眠・食事・運動を整えることで肉体レベルを高める。
自分に厳しすぎても、緩めすぎてもダメ。バランスが大切。
②はシステム(環境)を整えること。
「君子危うきに近寄らず」。お菓子やお酒を家に置かないなど、自分の目的にそって環境を先に変えてしまいます。
③は未来の計画・夢・目標に意識を向け続けること。
そのために憧れの生き方をしている人やメンターに近づき、意欲ある仲間を持つこと。
そして実際に行動し続けること。
このように、自制心を強化することで、目先の誘惑(マシュマロ)に負けない総合的な人間力が育まれます。
総合的な人間力とは、長期的で広い視野を持てること。
それは、子の行く末を案じる親の視点そのものです。
そして、親の視点を持てば持つほど、自制心も増えていきます。
互いに補完するのですね。
ダイエットしなければとわかっていても、甘いものをついつい食べ過ぎてしまう。感情を抑えきれず親しい人間関係を破壊してしまうなど、大人になっても人生のうまくいかない分野では、必ず子ども脳の方が強いのです。
だから、自分の心がどんなときに暴れるのか、傾向を知っておくことも大切です。
ところで、「朝三暮四」という有名な四字熟語がありますよね。
「目先の利益にだまされ、結局、同じことに気が付かない」といった意味なのですが、これは、ある中国のサル使いが、飼っていたサルに「朝は3つ、夜は4つの栃の実をあげよう」というと、サルたちは怒り出した。そこで「では、朝4つ、夜3つにしよう」というとサルたちは喜んだという寓話からつくられた言葉です。
サル脳(感情)は視野が狭く、短期的な報酬に目がくらみ全体がわからないということをあらわしていますが、このようなサル脳の特徴を知っておくことも、自制心を減らさないために重要です。
例えば、何かを変えたいとき、まずメリットを伝えたり、褒めたり、励ますなどポジティブ面を強調してから、修正点を伝えるだけでも、ストレスなく受け取りやすくなるのです。
戦略的に、しなやかに、
目先のマシュマロにだまされず、大きな結果を目指しましょう!