イギリスの最も成功したシンガーソングライターエルトン・ジョンの自伝的半生を描いた映画『ロケットマン』を見ました。
大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』の監督作品。
エルトン・ジョンの楽曲はやはり素晴らしかったです。
今回は、映画そのものより、セラピー的な視点から考察してみようと思います。
さて、『ボヘミアン・ラプソディ』も『ロケットマン』も、大スターの栄光と挫折、再生を描いているという点で、ストーリーの展開がとても似ています。
特に、『ロケットマン』では、映画の冒頭、エルトン・ジョンが子ども時代を振り返るセラピーシーンから始まります。
流れとしてはこんな感じです。
セラピーシーン
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親の愛に恵まれなかったシャイで自信のない少年時代の回想
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音楽の才能の開花、世界的大スターへと成長
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裏切り、孤独、愛への渇望から情緒不安定
ドラッグ、酒、セックス、買い物、あらゆる依存症
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崩壊
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冒頭のセラピーシーン
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ハグを望み続ける子ども時代の自分(インナーチャイルド)を抱きしめる
『ボヘミアン・ラプソディ』でもセラピーシーンこそありませんが、ストーリーの大枠は同じです。
映画のテーマの一つは、愛を得られなかった人間が、多くの人から愛される曲を生み出すという、人生のパラドックス。
でもね、
「孤独な少年だったから依存症になったのね。かわいそう」では、単なる思考停止にすぎません。
孤独は、イマジネーションを羽ばたかせる自由な時間も与えてくれたはずです。
カウンセリングこそ、そろそろ昭和の考え方から脱却した方がいいのだと思います。
せっかく成功できたのに、感情が不安定になり崩壊する。
究極の原因は「親の愛のなさ」としたところで、なんだかスッキリしないのです。
イマジネーション(フィクションを作り出す力)は素晴らしいマスターピース(傑作)を生み出しますが、幼いフィクションには情緒不安定という副作用があります。
特に、音楽や芸術といった分野は、大脳辺縁系(いわゆる古い脳)と密接に関係していて、常に情動的な記憶を刺激します。
つまり、「愛」とは何かすらわかっていない子どもの認識こそ、野放しにせず、再定義が必要なのです。
大脳辺縁系の特徴と整理整頓の仕方を知っているカウンセラーがいたら、時間と才能を無駄にしないですみます。