昔の私は、「できるようになること」が成長だと思っていました。
昨日の自分より少しでも前に進んでいたい、もっと高く、もっと遠くへ。
そうやって努力することが、正しい生き方だと信じていたんです。
でも、あるときふと、気づきました。
「どれだけ頑張っても、どこか満たされない」
そんな違和感が、心の奥にずっと残っていたのです。
それ以来、私はもうひとつの成長の方向、
横に広がる矢印に、目を向けるようになりました。
上に向かう矢印 ――「できる自分」が育っていく
上向きの矢印は、多くの人が「成長」と聞いて真っ先に思い浮かべる方向です。
たとえば、苦手だったプレゼンがうまくできるようになった。
あるいは、以前は「株ってギャンブルでしょ」と思っていた人が、勉強を重ねるうちにチャートが読めるようになり、今では周囲にアドバイスするほどの知識を身につけた。
新しい資格を取得したり、語学や楽器が上達したり。
「できなかったことが、できるようになる」変化は、明確で達成感もあります。
これらはまさに、上に向かう矢印です。
横に向かう矢印 ――「人としての深み」が育っていく
一方、「横の矢印」はもっと静かで、内側に向かう成長です。
それは、人としての視野や器を広げていくような変化。
たとえば、昔は嫌っていた父親の態度に、
ある日ふと「そうか、あれは愛だったのかもしれない」と気づくこと。
当時の自分には到底見えなかったものが、
今なら見えるようになっている、それは、確かな成長です。
こうした気づきは、しばしば苦しい体験や失敗の中から生まれます。
だからこそ深くて、静かで、でも人生の本質に近い変化でもあります。
それが横に広がる矢印の力です。
偏るとき、人は壁にぶつかる
上へ、上へとばかり伸びようとすると、
うまくいかない現実にぶつかったとき、心が折れやすくなってしまいます。
逆に、共感や受容に偏りすぎると、
自分の力で一歩を踏み出すエネルギーを見失い、
「何もできない」と感じてしまうことも。
だからこそ、上と横、両方の矢印があると知っておくことが大切です。
今、自分に必要なのはどちらの矢印?
「最近、ずっと足踏みしているように感じる」
もしそうなら、上の矢印が必要なのかもしれません。
「頑張っているのに、満たされない」
それなら、横の矢印を育てるタイミングかもしれません。
どちらの矢印も、人生にとってかけがえのない方向性。
成長って、まっすぐじゃないからこそ、面白いんですよね。