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あのとき、僕たちは革命の武器を手にしていたのかもしれない

僕は田中幸一。
58歳のしがないサラリーマンです。定年まであと2年。もちろん、60歳で余生を楽しむという時代ではないので、65くらいまでは働きたいと思っています。

まあ、僕のことはいいとして、ちょっと聞いてください。

僕が青春時代を過ごした70年代から80年代にかけて、革命がおきました。

世界が180度変わってしまったんです。

何の革命かって?

 

革命の武器はウォークマンでした。そう、ウォークマンですよ!

それは、突然あらわれ、僕らの生活を根本から変えてしまったんです。

あの衝撃は、今でも忘れられません。

1979年7月。僕は19歳でした。

大学1年生。暑い夏でしたね。

高校時代からの悪友Aが、「見せたいものがあるから出てこいよ」と連絡してきました。

ちなみに、携帯電話もインターネットもない時代ですよ。連絡はもっぱら実家の黒電話です。駅には伝言板があったな。そんな時代、信じられますか?

当時、僕は吉祥寺の喫茶店でバイトをしていました。
今でもコーヒーにこだわりがあるのは、あのバイトのお陰ですね。

だから、吉祥寺で待ち合わせをしたんです。公園口の改札で。

悪友Aはニヤニヤしながら待っていました。

「おい、幸一、すごいもの見せてやる」

Aの鼻はふくらんでいましたね。ヤツが取り出したのが初代ウォークマンだったんです。

手のひらにのるくらいの小さな箱、そんな印象でした。

 

「な、すごいだろ。発売してすぐに買った。これさえあれば、好きなカセットテープをどこでも聞けるんだぞ」

僕もウォークマンの噂は聞いていましたが、カセットテープを再生できるだけの小さな箱にしては高額でした。正直、ウォークマンにどういう価値があるのか、実感としてわかっていませんでした。

Aは、おもむろにウォークマンにヘッドホンをさしこみ、僕の耳に当てました。

Bob James HEADS!

 

ああ、その時の衝撃は、40年近くたった今でも忘れられません。

今でも思い出すと、涙が出るほどです。

自宅の大きなレコードプレーヤーか、コンサート会場でしか聞けないと思っていた音楽が、吉祥寺の雑踏の中で大音量で立ち上ったからです。

ボブ・ジェームズは僕の好みではありませんでしたが、そんなことはどうでもいい。

ただ、僕は圧倒されたのです。

 

言葉はもどかしいですね。

 

Aは、なおニヤニヤしながら、「歩いてみろ」と僕の背中を押しました。

一歩前に出ます。もちろん音楽も一緒についてきます。もう一歩。

自由!

感動でした。これがウォークマンなんだ!

それは、音楽を聴くということだけでなく、場所からの自由を意味していました。

大げさに言えば、生まれた場所に縛られる必要がなくなったのです。

音楽をつれてどこにでも行ける! 自分だけの音楽をつれて! 僕だけの世界!

自由がそこにありました。

 

 

 

 

 

ウォークマンがもたらしたものは、これまでなかった概念でした。

今でこそ、携帯ディバイスは当たり前です。もちろんヘッドホンもワイヤレスになりました。選択の自由がさらに広がっています。シーズン毎にきらびやかな製品が発売されています。いつの時代も、古い世代がつくったものの上に、突然現れたかのような顔をして新しい商品が誕生します。

でも、ウォークマンの登場に比べたら、どれも想定内なんです。

想像してみてください。70年代は、携帯電話もなければ、普通の人が音楽を持ち歩くという概念すらなかった。

概念がないのだから、ウォークマンの誕生以前と以後、世界は違うということです。

レコードに埋め尽くされた狭苦しい部屋で感じていた鬱屈した気分。固定された場所からの解放。僕たちはあの夏、人生の深い谷を軽々と越えたのだと思うのです。

 

僕にとって、ウォークマンの登場は、単なる商品ではなく、意識の変化の象徴でした。

大げさでしょうか?

インターネットや携帯ディバイスが当たり前の時代に生きている若い子にとって、初代ウォークマンは、笑っちゃうほど原始的なマシーンに見えるでしょう。そもそも、音楽を聴くのにカセットテープってどういうこと? ひどい音質!

確かに、その通りだと思います。

でも、概念がないものを飛び越えることは、世界がひっくり返ることなんです。

最初はその価値がよくわからなかった大衆が気づくころ、世界はそれまでと全く違った様相を見せ始めます。

だから、ウォークマンは僕たちの世代の革命の武器でした。
もちろんあの頃の僕らを、古い世代は苦々しく思っていたでしょう。

時々、こういった革命的な発明によって、大きく世界が変わることがあります。インターネットもそうですよね。そして、世界が変わるとき、それ以前を思い出せなくなります。あたかも昔からそうだったかのように。

「個の自由」の誘惑を僕たちは知ってしまった。
それは親の世代では飛び越えることができなかった深い谷でした。

というような話を、先日、飲み会で熱く語ったんですが、若手社員は見事に寝落ちしていましたよ。

 

ハハ。まあ、世代のギャップというのは常にそんなものですよね……。

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