学ぶ人の責任

「本日は、500名様満席でございます。どうぞ、前から詰めてお座りください!」

新宿のハイアットリージェンシー東京の宴会場は、作家林真理子さんの講演会を聴くために集まった女性たちで埋め尽くされていた。

平日の昼間で、これだけの集客力。もちろん林真理子さんの人気もあるだろう。

だが、それだけではないようだ。

座席には、さまざまなパンフレットが置いてあった。

一つは、主催者が関係する大学のオープンカレッジのパンフレット。英語、文章、心理学、歴史、経済、政治など、大学で学ぶような講座を一般社会人向けに公開している。

別のパンフレットは、旅行だ。もちろんただの旅行ではない。ワインと料理のマリアージュを学ぶためのワイナリーへの旅。

林真理子さんのファンは好奇心旺盛だ。講演会が始まるまで、皆熱心にパンフレットをのぞいている。この中の何名かは、さらなる学びをするのだろう。

 

そうなのだ。

今、大人に「学び」のニーズが高まっている。

でも、せっかく学んでも、「ああ、楽しかった」で終わってしまう人が多いのも事実。
学びっぱなしは、ただの娯楽だ。もちろん、それはそれでいいのかもしれない。
でも、もう一歩進みたい。

かくいう私も、これまで貴重な「学び」を、ただの娯楽のままにしてきた一人だ。

 

私は、生まれつき学ぶことが大好きだ。そして、様々なことを学んできた。

でも、小学校から大学まで、いわゆる学校というものが好きだったわけではない。

むしろ学校は嫌いだった。

狭い教室に、何十人もの子どもが朝から晩まで押し込められ、興味のない学問も我慢して聴いていなくてはいけない。知的な喜びを授けてくれる先生はごくわずかで、眠らないようにするのが精一杯。学びに興味のない生徒が授業中騒いでも、何も言うことができない先生もいた。

もちろん、そんな中でも、キラリと光る授業をしてくれる先生もいた。だが、あまりに数が少ない。

そうだ、あの頃は冷房もなかった。夏はどうしていたのだろう。椅子も机も小さく固く、すべてが窮屈だった。

もちろん、大人になった今では、義務教育のありがたさがよくわかる。
世界には教育を受けられない人もいるだろう。

でも、子どものときはそんなことを考えもしない。むしろ嫌なことを強制されたと思っているくらいだ。

結局、大人になってから、「学生時代、ちゃんと勉強しておけばよかった」と思う。
だから大人の学習熱がこれほど盛り上がっているのかもしれない。

学びの価値は、自分でお金を払うようになってしみじみ実感できる。
だからこそ、貪欲にもなれるのだ。もちろん、先生や学校を選ぶ視点も厳しくなる。

 

時代は変わった。

学ぶ場所もさまざまだ。豪華なホテル、貸し会議場、カフェ、本屋、自宅。特にネットは、学び方を180度変えてしまった。もう先生がいる場所に、その時間、必ずしも行く必要はない。

これまでは、場所に縛られていた。どうしても学びたい場合、引っ越したり、仕事をやめたりという多大なリスクを負わなければならなかった。

それがどうだろう。ネットがあれば、どれだけ距離が離れていても、万一、その時間に視聴できなくても必要な情報を手に入れることができるのだ。

学ぶハードルは、物理的にかなり下がった。意欲さえあれば、情報にアクセスできる。場所はカフェかもしれない、布団の中かもしれない。

同時に、リアルの授業の価値が下がることもない。

直接五感で感じる熱気(エネルギー)は、何よりも私たちが欲しいものだからだ。内容よりも、先生のエネルギーが人を変えてしまうことがままある。そして、同じ志の仲間が作れることのメリットは計り知れない。仲間とのやりとりの中で、新しい展開がおこってくることもある。

だから、上手に組み合わせて学ぶことで、さらに進化することができる。
優先順位をつけることで、効率よく新しいスキルを手に入れることが可能なのだ。

 

話を元に戻そう。
だからこそ、「学び」を娯楽のままにしていてはもったいないのだ。

人間は、受け身で楽しんでいるだけでは心から満足することはできない。
真に幸福になるには、創造(能動的な行動)が必要なのだ。

そうなのだ。私たちは創造するために生きている。この世界に、一つでも豊かな価値を創造できたとき、心から満足できる生き物なのだ。

そのために、大人の学びがある。

創造とは組み合わせの妙だ。
既存のものを組み合わせて、価値あるものを新しく創ること。

既にあるAとBを組み合わせる。その微妙な配分が、まったく新しい価値を生み出すのだ。

先人の苦労の上に、常に新しいイノベーションは起こる。
そう思うと、本当に先を行く人には感謝しかない。

だからこそ、人生を真に豊かにするためには、社会に貢献することが一番早い。

でも、どうしたら、その力を養成できるのだろう。

 

いきなり大げさに考える必要はない。
一つのヒントは、インプット(学び)とアウトプット(発信)をワンセットで訓練すること。

下手でもいいからアウトプットすることで、新しい価値を作っていく下地ができるのだ。

例えば、何かを知ったら、身近な人に教えてあげるだけでもいい。
アウトプットには、責任が発生する。

昔は漫画家や作家デビューはとても難しかった。
だけど、今はネットで漫画家デビューして、ネットで人気漫画家になってしまう人もいるそうだ。
スタートのハードルがどんどん低くなっている。

アウトプットする環境も実はすでにあるのだ。

 

だから、大人こそ、本気で学ぼう。

そして、新しい未来をアウトプットしよう。

その責任は、学ぶ人にある。